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 たまたま授業で一緒になったのが大地だっただけで、理沙と一緒になっていたら今日も理沙と寝ていただろう。暇さえ潰せれば誰でもよかった。俺には趣味がない。強いていうならアコースティックギターを弾くぐらいだろうか。けれど、そこまでうまくないし、誰かに聴かせる予定もないので、趣味未満と言うべきかもしれない。  五限終わりの学生がひしめく電車内で、大地が口を開いた。 「なあ、腹減ってるから何か食べよう。」  俺は別に腹が減っているわけではない。 「俺はいい。」 「え、そう?じゃあコンビニで弁当買っていこうかなぁ。」  さっき傘を買ったときになぜ思い至らなかったのだ。俺が呆れて指摘すると、大地はなぜか眉尻を下げて困ったように笑った。
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