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「そうしたら店長がさぁ、キレちゃってずっと事務所から出てこねえんだよ。俺と新人だけで客捌くの、無理があるよな。開き直ってゆっくりドリンク作ってやったわ。」
枕元にあるシェードランプと、テレビの横の間接照明だけが淡いオレンジ色の光を放っている。大地は部屋中央のソファでローテーブルに向かって煙草を吸いながら、アルバイト先で起きた事件を嬉々として語っていた。白いパイル生地のバスローブは、前が閉まっていない。俺はというと、下着のみの姿で、大地に背を向けてベッドに横たわっている。少し眠りたかったが、あと30分もしないうちに部屋を出ていかなければならない。
「店長、大人げねえよな。」
「そうだな。」
あまりに沈黙し続けると、大地の不機嫌を呼び込んでしまう。今日はもう何度も大地の言うことを無視した。これ以上は危ない。適度に相槌を打つべきだ。
大地は急に押し黙った。話は二割くらい聞いていたし、的外れな相槌ではなかったはずだ。そもそも的外れな相槌というものは、大抵存在しない。そうだな、なるほど、たしかに。自分の話を聞かせたいだけの奴には、この三つをローテーションすれば事足りる。
「……そういえば理沙と付き合うの?」
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