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 ぴくり、と俺は身構えた。静かな緊張感を背中に感じる。次に続く言葉を予想できた。また断ればいいだけの話なのだが、心理的負担は少なければ少ないほどいい。俺は最適解はどれなのか思案した。 「またそれかよ。付き合わないよ。」 「何だ、そうなのか。そういえば理沙って彼氏いるよな。」  俺は体力の失われた体を回して、大地に向き直った。 「うん。」 「お前さ、誰彼構わず会うのやめろよな。」  説教モードに入ったらしい。だが油断は禁物だ。早いところ別の話題に切り替えなくてはならない。 「俺から声をかけているわけじゃない。」 「断れよ。自分の体を大切にしろ。」 「おっしゃるとおりで。」  大地はぶつぶつと俺の貞操観念について文句を並べているので、俺は先ほどより感情を込めて、注意深く相槌を打つ。頃合いを見て、最近鑑賞して悪くないと思った映画の話を振ってみる。会話の中で出た単語を拾って、懸命に話を広げる。いつの間にか先ほどの緊張感はどこかへ霧散した。  そのうち、大地が最近組んだバンド――COMET HUNTERというらしい――について話し始めたところで、残り時間が十分を切った。
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