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将太が“好き”なのは“友達”であるからで、“恋人”ではない。
不意に将太と目が合う。
笑ってからベェッと出された舌。
こっちも舌を出して背を向けた。
「お前っ!」
一瞬ためらったような……でも、さっきまで先輩にされていたようにこっちにもやってくるヘッドロック。
「ちょっ!フザけんなっ!」
ギャーギャー騒いでその腕に触れる。
あんな大事に扱われるんじゃない。
こうやって雑に……あんな優しいキスなんかじゃなくて、言い合ってその顔面を押し退ける。
バチンと顔面全体に平手が入ると将太が顔を押さえて、そして、フッと笑いながら片目を細めた。
「お前ら、マジで付き合ってねぇの?」
「さぁね〜ぇっ!」
笑う将太を見て私も笑った。
これがずっと私たちらしい距離だった。
きっとずっと“好き”。
それはたぶん将太も。
でも、“付き合う”……それだと何か違って“付き合わない”、その友達としてが私たちには一番いい。
理解されないかな?
“好き”なのに“付き合わない”。
一番“好き”だから“付き合わない”。
そんなこと……。
「美嘉?」
「ふふっ……変な顔」
「お前なぁ……」
言い合いながら私たちは今度は自ら並んで座った。
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