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忘れられずに居たのは事実。
ずっと会いたかった。
一緒にまた笑いたかった。
“好き”……だと思う。
でも、それは“友達”じゃないかと言われると……。
将太のまっすぐなその目はそのまままっすぐに想いをぶつけられているようで、思わず目を逸してしまう。
付き合う前、一緒にただ笑っていた時のような軽さはなくて少し窮屈に感じてしまう。
それは事実だ。
“好き”だし“一緒に居たい”けど……それは“恋人”としてではない?
いや、そんなことは……。
顔を上げると、将太は少し悲しそうな顔のまま微笑んでいた。
「無理すんな」
言っている将太の方が無理しているようにしか見えないのに。
「俺の“好き”とお前の“好き”は違う」
「そんなの……」
「今は『ここに飛び込んで来れるか?』って聞いたら美嘉は来てくれると思う。でも、きっとまた違うことに気づくだろ?」
両腕を開いて、なのにその腕は私を引き寄せることもなく下に下げられた。
「何で……」
涙が滲んでくると、将太は空になっていたグラスを端に置いてメニューを手にする。
「フラれたあの日に俺がくだらない約束したから悪いんだよ」
こっちは見ないままやけに冷静に発せられた言葉。
「ヤダ」
「俺がちゃんと聞いて、無理矢理でも友達に戻ってたら……美嘉は苦しまなかったって」
首を横に振っても、将太はただ困ったように笑う。
「あの日約束した通り、ちゃんと友達に戻ろう?」
明らかにそれは将太の本心ではないのに……私は本当にそれを望んでいるのだろうか?
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