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話は、小林さんが生まれるよりずっと昔、明治の始め頃まで遡る。
当時の小林家の長男を、仮にSさんとしよう。
Sさんは幼い頃から頭が良く、周囲からは神童とも呼ばれるほどだった。
両親たちからの期待も、相当なものだったらしい。
そんなSさんが10歳のとき、重い病気を患った。
まだ治療法も見つかっていなかった病気で、医師も早々に匙を投げてしまう。
優秀な跡継ぎを失うことを恐れた両親たちは、その地域で有名だった拝み屋を呼んだ。
そして、分家の男児を1人、神様に生け贄に捧げ、代わりにSさんを生き延びさせるための儀式を執り行なってもらった。
どうやら当時はまだ、そういった信仰や風習が日本のあちこちに残っていたらしい。
儀式の成果なのかは分からないが、その後、Sさんは奇跡的に回復した。それから生まれ持った才能を活かして、家をさらに豊かにしたという。
さて。この儀式の後、拝み屋は2つのことをSさんの両親たちに指示した。
1つめ。
Sさんの代わりに亡くなった男児を弔うため、地蔵を庭に祀ること。
2つめ。
Sさんを始め本家の長男は、男児の命日の晩、絶対に実家から出ないこと。
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