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 私立の女子校の教師だというと、学生時代の仲間はみんな羨ましがった。しかし、実際はそんなに良いものじゃない。  新米で二十代の頃は、それこそ友達の様に生徒達も慕ってくれたが、十代の女子から見たら、三十を手前にした今の僕は既におじさんだ。教師だから、話こそしぶしぶ聞くけれどきっと陰であだ名なんかをつけられているに違いない。  歴史ある有名女子校に通う彼女達の家庭はみな裕福だ。今までの人生で苦労や我慢をしたことの無いだろう彼女達は輝かしい青春時代に入り、今まさに自分中心に世界が回っていると思っている。誰にも負けるはずかない、そんな自由で根拠のない自信に満ち溢れている。  僕はというと、年々生徒達と開く年齢差と共に教育に対する熱意が薄らいでいくのを感じていた。どうせ、僕の話は届いちゃいない。誰も古文なんて興味がない。とにかく、毎日やるべきことをやって、時々は教師らしく素行を正して、不難に上の大学へ送り出す。それが僕の日常だ。
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