17歳のマナへ

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そのメールはある日突然送られてきた。   いつも通りの朝だった。いつも通り余裕をもって早起きして、制服に着替えママの作った朝ごはんを食べて――鞄を持って家を出た。 秋も終わりの肌寒い朝、ゆっくり歩いて30分ほどの学校への道をあたしはいつも通りスマホ片手に歩いていた。 通知からLINEを開いて夜中に友達から来ていたメッセージに返信をする。他愛もない話。 友達から返事が返ってくるよりも先にホーム画面に戻ると、メールアプリのアイコンの右肩に①の数字が書いてあった。 新着メールが一件。…誰からだろう? メールなんてここ数年使ってない。 いつも来る企業とかサイトとかのメルマガやスパムはだいたい昼間に受信して即効消すから、こんな時間に新着メールがあるなんて珍しい。 なんだろうと思って開くと、差出人の所が空欄になっている。 普段なら2行見えるはずの本分の部分も真っ白で見えない。 そんな怪しいメール、普段なら開くこともなくそのまま削除するのに、なぜかあたしはそのメールを開いてしまった。 まだ起きて1時間も経ってないくらいだったから、正常に頭が動いてなかったのかもしれないし、もしかしたらその不思議なメールになにかを感じたのかもしれない。   開くと、『17歳のマナへ』から始まる53歳のあたしを名乗る人物からの文章が書かれていた。   人気のない薄暗い朝の道が、なんだか急に恐ろしくなった。 未来の自分からのメールなんて馬鹿げてる。 どこかのサイトの悪質な広告の類に決まってる。 だがそれにしては本文の最後にURLが貼り付けられているわけではない。 他に考えられるとしたら誰かのイタズラだろうか? その人はどうしてあたしの気持ちを知っているのだろう。   カツ、という靴音が響いて我に返った。 どうやらまわりの音に敏感になりすぎていたらしい。 向かい側から歩いてきた人の靴音にびっくりしてしまうなんて…   ばかばかしい。こんな曖昧なメール。 恋なんて年頃の女の子だったら誰もが抱えてそうな気持ちだ。 好きだけど伝えられなくて、見ているだけで満足、なんてきっとほとんどの子が抱えている悩みだ。 占いなんかと一緒。大勢の人に当てはまりそうな無難なことを並べているだけだ。   名前は、前にどっかで登録したサイトから漏れたんだろう。 なんか怖いしメアドも後で変えておこう。
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