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「オイラは寝る前毎日これ聴いてるよ。なんなら教室でもよく聴いてるさ。オイラもこれをすごく気に入ってる。」
ジャンボはやはり笑顔ではないが、嬉しそうだ。
ジャンボは教室のこの端っこの席で、よくこの歌を聞いていたんだな。
落語と、ララバイ…。
「やっぱりジャンボってナイスな奴だよな。」
僕が言うと、
「自分の好きなものがあるというのは、本当に幸せな事だぜ、勇気。」と、
誇らし気な態度で答えた。
明日から20日間、夏休みに入る。
7月末から8月中旬頃まですっぽり夏休みだ。
僕は休みに入る前にジャンボとLINEを交換した。
そして休み前最後の学校を終え、ジャンボと一緒に下校した。
「ジャンボいつも忍者並みに早く帰るじゃん。今日は捕まって良かったよ。」
「今日はな…もう限界だったからな。」
ジャンボはいつも本当に猛スピードで帰ってしまうので、今までなかなか一緒に帰る事が出来なかった。だが今日のジャンボはいつものスピードで教室を出た後、急にUターンし、トイレで駆け込んでいった。
僕はトイレ前でしばらく待ってみると、そのうちジャンボが「漏れるかと思った。」と独り言を言いながら出て来た。
「いつも何でそんな早く帰るのさ。」
「オイラは家でやりたい事が沢山あるんだ。学校が終わったら一秒でも早く帰りたい。それだけさ。」
「ふーん。ジャンボ、夏休みは何かするの?」
「図書館に行ったり児童館で子ども達と遊んだりするだろうな。おかんが児童館で働いてるんだ。たまに顔出して子ども達と遊んでやる。あとはほとんど家で過ごすな。オイラはかなりのインドア派だ。」
ジャンボと僕の家は結構近い事が分かった。徒歩で10分程で着く。
僕の家の方が学校寄りにあり、ジャンボの家はそこから少し行った河原の近くの家だ。
「ジャンボ、インドア派なんだ。ねえ、夏休みの間も遊んだり出来る?」
「そうだな。君が遊びたい時、連絡してみてくれ。何もなかったら別に構わない。」
「ジャンボいつもなんか忙しそうだから、そう言ってもらえて良かったわ。
LINEするからちゃんと見てね。」
そう、ジャンボはよくLINEを既読スルー、未読スルーする。
後で訳を聞くと、「えっ返す必要あったのかあれ…。」とバリバリ会話の途中で終わっているのにも関わらず、そんな反応をしていた事があった。
僕は、ジャンボの人とは違う思考回路や物事の認識の仕方、ジャンボの哲学をすごく気に入っていた。いつの間にか、僕にとってジャンボの存在は大きいものになっていた。
ジャンボは僕の事を友達だと思ってくれているのだろうか。でも、別に聞く必要はないと思った。
そもそもジャンボは友達という概念をあまり気にしていないだろう。
ただ僕達は時の流れの中で自然と一緒に居る、そういう風に捉えて居るのだろう。
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