2人が本棚に入れています
本棚に追加
それ以来、もう学校へ行くのが本当に億劫だ。
毎日蝉達の合唱を聞きながら、僕はこのままどこか遠くへ逃げてしまおうかと思っている。
「蝉よ、お前の命は8日だったよな。今だったら僕はお前になりたい。そんだけ大声で鳴いたらストレス0でしょ。そんで好きなだけストレス発散して、あとはもうこの世にオサラバ、サッパリ死んじゃうんだ。俺もそういう風になりたいよ。」
誰もいない、と思い、僕は独り言を言った。
すると、右側の後ろからヌッと大きな影が僕に近寄った。
「知ってるか?蝉ってな、最初地面の中にいて、自分が飛べるって事を知らないで生きてるんだ。で、ある日突然もう死ぬと思って、一生懸命地面から出ようと這い上がる。やっと地面に出た時に、自分が飛べるという事に気付くんだよ。」
低くて、やたら早口な声だった。
僕はギョッとして後ろを振り返った。
「えっと‥‥‥木成君だっけ?」
「そうだけど。皆はジャンボって呼んでる。本当はジャンボモナカだったんだけど、ジャンボに省略された。」
それが、僕がジャンボと初めて話した時だった。
ジャンボモナカのくだりはウケを狙ってるのかと思いきや、ジャンボは全くもって真顔だった。
身長が2メートルくらいあるんじゃないかと思うくらい、デカい。実際は190センチなんだそうだ。
僕は身長が160センチしかないので、ジャンボと並ぶとまるでバスケットプレイヤーと女子マネージャーのような格好になる。
「えっと、僕は‥‥」
「知ってるよ、勇気君だろ。勇気のユウキ。クラスメイトの名前は一応全員覚えてるよ。」
ジャンボはめちゃくちゃ反応速度が速い。
僕が次の言葉を探す、その間にもう返答を返してくる。
最初のコメントを投稿しよう!