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体育の授業、僕はジャンボとペアになって体操をしたが、身長が合わなすぎてうまくバランスが取れなかった。
先にも述べたが、ジャンボは190センチ、僕は160センチ。30センチも身長差がある。
体操しながら僕らは会話をした。
「ジャンボって本当にでかいよね。遺伝なの?」
「ああ。おとんもこんくらい身長がある。オイラは完全におとんに似た。おかんに似てたらもっと可愛い顔になっていたかもしれないけど。おとんに似て、でかくてこんなに老け顔だ。」
「はは、老け顔って…。」
ジャンボは手も足も大きかった。身体の細胞分裂のスピードが他人よりずっとずっと早いようだと僕は思った。
僕はジャンボに聞いた。
「ジャンボはクラスのLINEグループに入っているかい?」
「LINEグループ?」
「そう。2年3組のLINEグループがあるんだけど、僕は入ってない。ああいうのはクラスの仲の良い奴らで結束されてんだ。怖いよなあ。悪口言われてるんじゃないかっていつも思うよ…。」
僕は体育館の床に座り、頑張って脚を最大限広げ、頭を床に押し付けようとする。ジャンボはその僕の背中を押す役目だ。
「またそういう話か。どうでもいい、と言ったら君に失礼かもしれないけど、本当にどうでもいいな。オイラなんて最近仕方なくLINEを始めた。家族で連絡をいつでも取れるようにって理由でな。でも別にLINEなんてやってなくてもいいし、クラスのLINEグループに入りたいとも思わんな。学校でどうせ会うんだから、大した意味もないだろ。」
「ジャンボはそういう意見を言うと思ったよ。なんか、ジャンボみたいな奴が一人でも居ると、助かるよ。何でだろうな、自分が心細い状況の時、マイノリティな意見ってすごく救われるんだ。」
ジャンボは本当に不思議そうな表情を浮かべた。
「そんな事で感謝してもらえるならマイノリティ上等さ。」
僕らは体操をしながらずっと喋っていた。
クラスの奴の話や、自分の家族の話、好きなテレビや芸能人の話、世の中のニュースの話。ジャンボと話す時間は僕に潤いと新たな発見を与えてくれた。
突然、向こう側からバレーボールが飛んできて、ジャンボの頭にボーーンと当たった。
「ああ〜〜〜ジャンボごめん!!」誰かが叫ぶ。
もう周りの奴らはとっくにバレーボールに切り替えていて、僕とジャンボだけが端っこでいつまでも体操をしていたらしい。
それくらい、ジャンボとの時間は楽しくてあっという間に時間が過ぎた。
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