真打ち

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真打ち

あれは、そう。どこからともなく突然、落ちてくる。私が何をしていようと完全に無視だ。いやいや、そんなことある?日常で?と思うだろうけれど、あるのだ。 落ちてきて欲しいと必死で願っている時には、ちっとも来ない。いつも不意打ちを食らうのである。果たしてそれは意地悪なのか、サプライズなのか…? ある時は、桜の花びらのように優しく紳士的に。 ある時は、落雷のように激しく衝撃的に。 ある時は、掴んだ豆が箸からこぼれ落ちるように小さく論理的に。 時間や場所にも規則性は見当たらない。 私の場合は入浴中か就寝前が多いけれど、それは、あくまで統計の話で、タイミングとして一番酷いのは、諦めた瞬間である。 【受付終了まで】あと2時間 は!?ちょっと…やっと寝られると思ったのに、今なの!?何時だと思ってんの!今からまとめるなんて無理だって! 何それ。何そのいい感じのやつ。ああもう…せめて夕方か…明日の朝に落ちてきてよ…わざと?わざとでしょ?ねえ!焦る私を見たいだけなんでしょ!? ……は?やるよ!やるけど!読んでもらいたいから!全くもう毎度毎度、勘弁してよ… 私はに文句を言いつつ、難しい式を解く数学者になったつもりで一心不乱に加筆修正をする。福山雅治主演ドラマ「ガリレオ」のメインテーマが脳内で流れ、同時に起こされる。恐らく鬼の形相であろう。実に面白…くない。 何とか外見だけでもハンバーグになればいい方なのだけれど、やぶれかぶれでミンチの状態のまま炒めて丸いお皿に詰め、ハンバーグに似せて出すこともある。生のミンチのまま調理できないことも、しばしばだ。いや、ほとんどそうかもしれない。四方八方に散らばったミンチを呆然と見つめて終わるのだ。 分かっている。美味しいものでなくてはいけないことは。分かっている。ハンバーグの他にも付け合せにグラッセを乗せた方がいいことは。 だけど、例え丸い容器に入ったミンチであっても、調理したのなら、食べられるのなら出さないよりはいい。味見もしないで処分するよりマシだ。そう言い聞かせて私はひたすら終着へと向かわせる。 お分かりいただけただろうか。参加し始めてからというもの、私は常に念じている。ハンバーグのではなく、話のよ。 落ちて来い……落ちて来い…… 『妄想コンテスト用のアイデア』なんて、凡人の私には簡単に落ちて来ないんだからねーー! 落ちてきたら、それこそ一大事なんだからねーー! (了)
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