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鳥モモ肉に下味を染み込ませている間、他の惣菜を作りながら今日見た夢のことを思い出す。あれは私にとって最後の運動会――小学六年生の運動会の出来事だった。
あの頃は運動神経も良い方で、徒競走ではいつも先頭を走っていた。選抜リレーの選手にも選ばれて楽しみにしていた運動会前日、母から「お弁当のおかずで何かリクエストはある?」と聞かれた。
「唐揚げ!!」と迷わず答える私の頭を撫で、「わかった。約束ね。本当に美咲は唐揚げが大好きね」と言った母。
でもあの日、お弁当に母自慢の唐揚げは入っていなかった。いつもは好きなのに、代わりに入っていた冷凍食品のミートボールが憎たらしく見えた。
その日は朝から階段で足を滑らせたり、当時好きだった男の子と上手くいかなかったり、何に対してもむしゃくしゃしていた気がする。
もう二十年も前の話だからか、脳が悲しい過去を書き換えようとしているからか記憶はかなり曖昧になっている。でも、私がつい暴言を吐いてしまった後、生まれて初めて母の寂しそうな表情を見たことだけは忘れられない。
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