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火の玉事件と夜な夜な怪奇
9月16日
「お父さん、今日もまた火の玉事件テレビでやってたよ、なんだろうね」
「通報あっても燃えてるものがないんだから消防にもどうしようもないからなぁ」
夕飯時の話題は巷を騒がせている『火の玉事件』についてだ。
川原や夜の公園で火が燃えていると通報があり、消防が駆けつけると何もない。しかし目撃者は多数で、皆口を揃えて「火の玉が飛んでいた」と言うのだ。メディアも現在注目しているらしく、話題に欠ける地味な浅見川市が事件性とオカルト性で今にわかに盛り上がっている。
「誰かの悪戯だと思うけどね」
父が少し忌々しそうに言う。
「毎日続いてるもんね」
「通報を受ける身にもなってほしいね。出動もただじゃないし」
消防関係者として今回の出来事は煩わしい以外のなにものでもないのだろう。
「お父さんのところも直接影響あるの?」
「直接はない。まあ一応変なやつ出てるんだから、なるべく早く帰るようにしろ。残業なら迎えにいくから」
「あらパパちゃんやさしーねぇ」
考えたことを口に出すのが少ないうちの父の下手でつっけんどんな心配の伝え方を母がフォローした。
でも、生憎と私は、火の玉事件なんてものよりもっと身近なところで怪奇的な悩みがあるので、あまりそちらに気を割いている余裕はない。
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