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「なあ、あんたはどうして、この事件を追おうと思ったんだよ?
警察だってマスコミだって、だんだん飽きてきてるような事件をさ」
酒のせいで少しぼんやりした顔になった男に笑いかけてやる。
「もともとこういった、超常的なことに興味があったんだ。あと……そうだな、君には見せても良いかもしれない」
もちろん超常的なものにの下りは嘘だ。私はオカルトこそ好きだが基本的に平穏無事に過ごしたい人間である。スマホを取り出して、写メを見せる。
「これは?」
「とある場所で手に入れたものだ。デザインが何処の産地のものかもわからない」
男が食らいつくように見つめている。その画像は、あの黒い神殿から持ち帰った黒い箱だ。交渉に使えるかもしれないと撮影して来たのだ。
「どっかで見たような。それこそ俺の家の蔵にこんな感じの本があった気がする。このデザインと似てたと思う」
「本当か」
「ああ、ただ読めないんだ。本に鍵が掛かってて」
「……」
気になる。それも無性に。あの箱の中にあった宝石には、もっと知りたいと思うように仕向ける何かが籠められていたのかもしれない。しかし、今はこれに構っている暇はない。必死に気持ちをよそへやろうとしていると、男が心配そうな声を上げる。
「おい、顔怖いぞ。大丈夫か?」
「ん、ああ、大丈夫だ。すまない。まあこんなものを持っているから、こういう不思議なことについては勘が働くのかもしれないな」
顔がこわばっていなければ良い。笑えていればいい。
「それで、そろそろ答えてくれるかな? 続ける理由、その実のところを」
男は頷いた。
「このノートを書いたのは、俺の高祖父なんだ」
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