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二日酔いの朝
9月18日
「ちょっとどこで寝てるの!
飲んできたにしても玄関で寝るだなんてだらしない」
頭が痛い。玄関に射し込む光は白かった。知らない間に朝を迎えていたらしい。固い床で寝ていたせいで体のあちこちも痛いし、どうにも冷えたらしくてぶるっと震えが来た。
「寒い」
「そんなところで寝たら当たり前でしょ!
炬燵つけちゃるから早く上がりなさい」
母親に急かされて炬燵に入り、突っ伏した。酒が抜けてない。でも、これのお陰で昨日のことは夢じゃなかったんだと実感する。儀式を読み解いて、先回りして現れた人。魔法のことを、火の霊のことを話しても気味悪がらなかった。それどころか自分もそういったことの中に身を置いている、と明かしてくれた。
「なににやけてるのよ、気持ち悪いね」
「昨日ちょっといいことがあったんだよ」
「それはそうでしょうよ。あんた誰かに迷惑かけたなら、謝ってお礼言っときなさいね」
呆れた声が帰ってくる。そうだ。うっすらとタクシーに乗せてもらったところは覚えている。そこから記憶が飛んでいるが、その後玄関に引っ張られて行ったのは覚えている。そういえば道中数回転んだかも。体に神経を向けて違和感を感じ、膝を見ると青アザと擦り傷があった。擦り傷にはご丁寧に絆創膏が貼ってある。きっとあの人だろう。
「言わなきゃいけない人がいるや」
「だろうね。あんた温まったら風呂入んなさい。酒臭くて敵わんわ」
目の前に梅干し湯が置かれた。それを啜りながら母親を見る。
「兄ちゃんは?」
「まだ寝てる」
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