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「等間隔のお陰でだいぶ絞れたな」
現代の犯人は浜宇都神社の3㎞手前で昨日『火の玉事件』を起こしている。つまり、今日は2Kmの範囲で事件を起こすだろうということが予想できる。
「それと昨日の事件から1Km範囲内。夜になると人気がなくて、ある程度広さのある場所……」
尺度の大きい地図では細かい情報がわからなくてスマホの地図を起動し、その方面を拡大して見る。
「浜宇都神経病院、これ取り壊しされて更地になったはずだ。ここなら全部条件満たしてる」
なら、今夜することは決まった。犯人に接触を図る。儀式の条件を聞き出せれば最高だ。儀式さえ邪魔してしまえば召喚は起こらないだろうから。
「なんだ、現場に行かなくても大丈夫そうだな」
ぼやいてみて、本当に?と自分に語りかける。本当に見落としはないか。本当に行かなくてもいいのか。
「コンビニも行ってないもんな……行くか」
調べものですっかり昼になってしまった。美味しいものが残っていますように、と思いながら資料を片付けた。
未だ秋晴れの空。今日はきっと一日中晴れなんだろう。日向ぼっこしてそのまま昼寝したい。日焼けするのは嫌だけれど。そんな馬鹿なことを考えながらサンドイッチをかじる。最近はフルーツサンドなんてものもなかなか高いクオリティで売っているということを知って買わずにいられなかったイチゴホイップサンド。美味しい。季節外れのイチゴなのに買わせてしまうんだからイチゴの魔力というのは恐ろしいものだ、とショコラオレを吸った。甘さ控えめなカカオの風味とイチゴサンドが混ざってちょっとしたデザート気分になるが、それで昼御飯を済まそうとしていると告げたらきっとうちの母は「今すぐ家に帰ってちゃんとご飯を食べなさい」と私を叱るに違いない。
「んー……本当にいい休日なはずなんだけどなあ」
召喚されたら大火災なんていうものを止めろ、なんて相変わらず余りにも現実離れした話すぎるのに責任が重大すぎて。まあ、私が失敗しても私のせいだ、って言う人はいないのだけれど。それこそあのカミサマぐらいだろう。それにしたって気分は晴れないものがある。失敗したら一生引きずる。いや、もしかしてカミサマが悪い意味でお迎えにくる可能性も大きい。
「結局頑張るしかないかぁ」
犯人とどう渡り合うか。儀式の条件を聞き出すには。儀式を止めるには。まだまだ考えなければならないことは多い。食べ終わったものの包みをくずかごに捨てて、公園のベンチを後にする。まず今できるのは現場巡りだ。
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