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「どうしましょう、とりあえず部屋の中を手分けして探しますか?」
マリオがリビングの中を見渡しながら、皆に問いかけた。確かに、残る4人でひとつところを探すより、分散した方が確率は高いだろう。だが、1人では見落としてしまいそうなところに、他の誰かが気付くという可能性もある。4人バラバラになるより、2人組のペアを作った方がいいか。などと考えてる間にも、すぐに行動に移すべきか……?
迷っているヒマはないと思いつつ、ここは冷静な判断が必要だと俺が考えていると。それまで黙っていたジャックが、「すっ」と立ち上がった。
「求めよ、さらば与えられん、か……」
ジャックはそのまま、リビングの壁に備え付けられている本棚の方に歩み寄った。本棚は高さが約2メートル、幅がその半分くらいの縦長のもので、床に近い下部には戸棚があり、その上に4段組の棚が作られていた。各棚には英文字が背表紙に刻まれた、高級な装丁の文学全集のような分厚い本が並んでいる。
「経験や知識をフルに生かして、目当てのものを探し求める。とすれば、やはり『知識が詰まっている場所』だと言える、この本棚が一番怪しいだろう。並んでる本はみな英語表記だが、その英訳をしている時間はない。それぞれが厚い造りになってるから、本を開くと入れ物のようになっていて、その中に解毒剤が隠されてるって可能性が一番高いかな。
だが、30分という制限時間がある以上、その他の可能性も探っておいた方がいいだろう。俺とマイケルでかたっぱしから本を調べて、マリオは下の戸棚を調べる。キャシーは暖炉の方を調べてくれ。テーブルはさっきの『管のゲーム』が仕組まれていたから、他の仕掛けがある可能性は低い。暖炉にも隠しドビラのスイッチがあるが、それは撮影中ではなく『休憩中に使うもの』だ。であれば、ゲームとしての仕掛けがまだ隠されてるかもしれない」
ジャックがこれまでとは打って変わって、テキパキとした指示を出し始めた。さっきまでは俺のことを「リーダーさん」と呼んでいたが、こういう状況になった以上、自分がリーダーシップを取るのが当然ということか。そして俺も、少なくとも俺を含めた他の3人よりも「奴らについて詳しい」であろうジャックの指示に従うのが、ここはベストではないかと思っていた。
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