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 俺たちはソファーに座り、ぐったりとしたまま、しばらくひと言も発しなかった。トリセツの通りなら、マリオが飲まなかった赤い錠剤が解毒剤のはずだが、ここまでの流れから言えば、そう簡単に信じられるものではない。それでも、手や舌の先に感じていたしびれが徐々に消えていくのがわかり、俺は「ふう……」と深いため息をついた。 「あ~~、指もちゃんと動くし、話すのも楽になった! 良かった……なんて言ったら、罰当たりかもしれないけど。マリオのおかげで、助かったわね……」  キャシーが助かったことに喜びつつも、複雑な表情で「本音」を漏らした。 「そうだな……タイムリミットがあったから、仕方ないかもしれないが。もっと早く気付くべきだった。この、ファイナルのゲームに仕掛けられた意味を……」  ジャックはキャシーよりも更に苦悩の表情を浮かべ、額に手を当てながら呟いた。そういえばジャックは、マリオが青い錠剤を飲むのを必死に止めようとしていた。あの時点で、「何か」に気付いたのか……? その疑問は、ジャック自身の口からすぐに語られることになった。 「これまでの経験を生かして、このゲームをクリアする。それは、俺の過去に関するゲームをという条件を出した以上、今までに俺が経験して来た事柄がヒントになるのは間違いないと思えた。それに、LEVEL3で使った、色鮮やかな原色のボール。赤と青のどちらかの錠剤を選ぶという選択肢を突きつけられたら、否が応にもそのことを思い出さずにいられない。それが、奴らが巧みに仕掛けた『罠』だったんだ……。  まず、俺が救えなかった思い出の女性が、赤い色の服を好んでいたということ。俺は彼女より先輩を助けるという『選択』をし、そのことにより彼女は死ぬことになった。そんな過去を思い出したら、赤い色が『死をイメージしている』と感じるのは当然だ。    それに加えて、LEVEL3で赤いボールが行き止まりになり、青いボールがゴールにたどり着き。サマンサがそれを見て、子供の死を思い出したという事実。これも、『赤が死を意味する』と思わせるものだったが……実際は、その逆だった。それが、奴らがこのゲームに仕組んだ『意味』だった」
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