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 なるほど、ただ単に青と赤の錠剤を選ばせるだけでなく、ジャックを心理的に追い込む算段だったのか……。だが、これに関してはジャックの方が一枚上手だったらしいな。マリオを救えなかったのは残念だが、時間制限があったことを考えれば、誰かがあそこで賭けに出るしかなかったとも言える。そう考えれば、この「ファイナルレベル」を生き残ったことに、感謝すべきだろう。 「でも、仕方ないわよ。あたしもあの時は、手が震えるし喋りにくくなるしで追い詰められちゃって、本気で青い方を飲むつもりだったし。それがあったから、マリオも自分がやるって言いだしたんじゃないかしら。だから、あたしにも責任がある。ジャックさんが悔やむことはないわよ。それより、こうして3人とも最後のゲームをクリア出来たのは、ジャックさんのおかげだもの。あたしやマイケルにすれば、命の恩人よ、ジャックさんは」  キャシーが少し落ち着いたのか、これまで通りのムードメーカーらしい言葉でジャックを慰めた。確かに、自分に関する過去に基いたゲームを行うよう、そしてそれを最後にするよう条件を出すというジャックの提案がなければ、俺もキャシーも最後まで生き残れたかどうかはわからないからな。でなければ、ジャック1人が生き残るという「結末」になっていた可能性も、十分にある。俺はそう考えたのだが、ジャックの考えは少し違っていたようだった。 「……いや。ファイナルレベルを終えて、3人も生き残るのは予想外だったかもしれないが。俺が『命の恩人』ってのは、ちょっと違うかな。俺の考えでは、最後のゲームを終えた後に、誰か1人は必ず生き残る予定だったんじゃないかと思う。そう、例えばキャシーさん。あなたはこのゲームが始まった時から、その『最後に生き残る1人』に決まってたんじゃないか……?」  あまりに意外なジャックの言葉に、俺は「えっ」と呟いて、キャシーの方を垣間見た。そのキャシーは少し青ざめた顔で、先ほどドリンクに仕込まれた毒が回って来た時のように、両手の先を小刻みに、ブルブルと震わせていた。
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