プロローグ

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 2人の顔を見てすぐに、彼らが「ゲームの参加者」だとわかった。同じくリビングに入って来た俺を見て、彼らもまた俺のことを参加者だと認識したらしい。つまり、入って来たのはこのゲームの「主催者」ではなかったという、当てが外れた思いと少しの安堵を感じた表情が、見て取れたのだ。  俺がもし「主催者」だったとしたら、ゲームはすぐにでも幕を開けることになる。そんな緊張感と共に、ドアを開けた者の姿を確認したのだが、入って来たのは自分たちと同じ「参加者だった」というわけだ。若い女も中年男も、それっきり俺の方を見ることなく、黙り込んでいた。ゲームの参加者であるということは、すなわち「ライバル」でもあるということなのだから、親し気な挨拶などは無用だと思っているのだろう。俺もそれは承知の上で、2人に倣ってソファーの開いている位置に座ることにした。  どこに座っても良かったのだが、やはり座るなら中年男の近くより、若い女の隣だろう。とはいえ、ライバルであることに変わりはないのだから、もちろんその女とは節度を持った距離を置いて座ることを心掛けたが。  それから程なくして、女性が1人、男が2人リビングに入って来た。彼らも特に待ち合わせなどしていたわけではなく、それぞれに地図を頼りにしてここまで来たのだと思われた。つまり彼らも参加者で、ゲームの勝者を争うライバルだ。俺も含めて「先に来ていた者たち」が無言を貫いていたため、後から来た3人も自然と言葉を発することなく、ソファーに腰を落ち着けた。  そして、「6人目」がリビングに入ってからしばらく、言い知れぬ沈黙が続いていた、その数分後。リビングの入口のすぐ横にあった、テーブルの上に置かれたモニターの電源が入った。俺たちは一斉に、そのモニターに注目した。 『ようこそ皆さん、私どもの主催するゲームへお越し下さいました。私は、これから皆さんにゲームについての説明をさせて頂く、”案内人”です』  モニターに映った、能面のような無表情の白いマスクを付けた男が、そう言って俺たちに向かって頭を下げた。男はこの山荘内のどこかの部屋にいるのか、大きな背もたれのあるイスに腰かけており、背もたれの背後には、壁にかかった時計がちらりと見えた。昔ながらのアナログ時計の針は、21時ちょうどを指している。それが、ゲームの「開始時間」ということか。
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