プロローグ

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『私たちは皆さんをゲームにお誘いするにあたり、「あなたは、今の生活に満足していますか?」とお尋ねしました。もし満足されていないなら、通常では手の届かない満足を得るための、ゲームに参加しませんかと。ただし、いま現在の「不満足な生活」を、捨てる覚悟があるのならば……。このように、私たちは皆さんにちゃんと「忠告」をした上で、その意思確認もしました。このリビングに来た時点で、皆さんはその覚悟をしてきたのだと認識しています。つまりここに来た以上は、もう「元の生活」に戻れなくとも、仕方ない。皆さんは、ゲームをクリアする以外に、この部屋から出る手立てはないのです』 「た、確かに、覚悟はあるって、送られてきた書類に署名をしたけどさ。だからって、こんな風に監禁するのって、犯罪じゃないの?!」  さっきまでは無警戒に、あっけらかんとテーブルの上の箱を開けていた若い女が、切羽詰まったような声をあげた。こんな目に逢うのは、ヤンキー男の言う通り「聞いてない」ってことだろう。他の3人も、「ちくちょう、騙された!」と言いながら、ドアを拳でゴンゴンと叩くヤンキー男を、不安げに見つめていた。そして、俺は……。  俺は、もしかしたらこれくらいのことはあるかもしれないなと、なんとなく予想していた。ゲームの誘いをかけてきたメールも、それを見つけたサイトも、怪しげな雰囲気が漂っていたからだ。最悪、山荘まで苦労してたどり着いても何もないか、カメラクルーやお笑いタレントが出てきて「どっきりです~」と言われるのかと思っていたが。どうやら事態は、もっと最悪の方向に転がり始めたようだ。 『これも前もってご説明していたように、この山荘には外部に通じる通信手段はありません。スマホなども、ゲームをクリアするにあたりヒントなどを検索することのないよう、リビングに入る前に、こちらで用意しておいた箱に入れてもらうように指示をしましたからね。繰り返しますが、ゲームをクリアする以外に、「外に出る」手段はないのです』
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