プロローグ

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 案内人のその冷静な語り口が、リビングにいる者たちを更にイラつかせ、不安を煽っていた。それも恐らく、「奴ら」のやり口なんだろう。こちらがいくら泣こうがわめこうが、ゲームは予定通りにスタートするのだと。俺はそんな案内人の落ち着き払った言動に、少し違和感も感じてはいたのだが。ならばここは、むやみに泣きわめくのではなく。こちらも冷静になって、ゲームをクリアすることに集中しなくては……! 『それでは、ゲームを始めましょう』  その、至極ありきたりな開会宣言で。人里離れた山奥にある、外部との通信手段のない山荘のリビングを脱出するという、俺たちの「サバイバルゲーム」は幕を開けることになった……。  と、そこまで「場面」が進んだところで。リビング内に、「カット!」の声が響いた。 「では少し休憩してから、次はシーン36。案内役の映像が消えて、皆さんの会話が始まるところからスタートします」  俺を含め、リビングのセットに集められた「6名の役者」は、一斉に「う~~ん」と伸びをしたり、「ふう」とひと息ついたりした。インディーズ系の新作低予算映画、『ゲーム・オブ・インコンプリート』の撮影は、案内人が説明をする冒頭のシーンを撮り終え、ようやく始まったばかりだった。
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