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1.
午後3時ちょっと過ぎ、俺は府中競馬場前駅の改札に到着すると、既に『ユニック・ファイナンス 吉祥寺支店』の先輩社員、清野 蓮が待っていた。
「キヨさん、日曜日も馬ッスか?」
「俺から馬とオンナを取り上げたら何が残るんだ?あぁ?」
彼は自嘲気味にふてぶてしく笑った。とても、30歳と思えない風格と体格である。28歳だが、マッチ棒様でスタイリッシュな俺とは体型から違っていた。
「へっ!違げぇねぇや。」
「今日、オンナ、二人いるんだ。ヒトリお前にと思ってよ。」
「どういうことだ?競馬場にオンナとか・・・」
「まぁ、いいじゃねぇかよ。本人達が良いって言ってんだからよ。」
「また、同伴でキャバ嬢達に利用されるだけじゃねぇの?」
「うるせぇよ!オンナ、紹介するって言ってんじゃねぇかよ!文句あんのか?」
「まだ、真凛とツルンでんのかよ。あの金食い虫。キヨさん、給料なくなるぜ?」
「カンケェネェーーだろ?俺が稼いだ金をどう使おうが。あぁ?」
俺は諦めた。清野は言い出したら始まらない。
「分かったよ、オンナ、呼んでくれよ。どうせ、今夜、キャバクラに同伴なんだろう?」
「ついてこい。」
清野は俺に顎をシャクった。黒のスエットのズボンに真っ白なパーカー。それを着ればオンナは股を開くと思い込んでいるデブが清野 蓮というオトコだった。
今日も蓮はその出で立ちだった。正直、30になるまで、蓮がどんなオンナと付き合ってきたか少し興味があった。30歳にして玄人にしか相手にされないというのは、よっぽどの金持ちか、バカか。清野 蓮はどっちだ?俺は表情を変えず嗤った。
府中競馬場前駅の改札から競馬場まで緩やかな下り坂になっている。下がりきった右手に夜の商売のいかにもというような、ド派手な衣類を着た松本 結衣奈というオンナと白のトレーナーとブルージーンズを着た、細身の可愛らしい河北 心愛がいた。
「コイツがウチの支店の超絶イケメンの北條 健だ。性格もいい。真面目だ。ヨロシク。」
と、二人の女に俺は紹介された。
「よろしくーーーーーーっ!」
『あーーー。キヨさんは、デブ専だった。だったら何故に細いオンナ?』
と、自分の心のメモ帳をアップデートしていく。ということは、白のトレーナーに地味なジーンズのガキを相手にしなければならないと言う、現実を突きつけられ日曜日の夕方には堪らんなぁと、俺は真底、思った。
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