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6,
俺は○屋で牛焼き肉定食を食べていた。○○屋の牛焼き肉定食よりは○屋の牛焼き肉定食を好んで爆食していた。シロはもちろん特盛だ。
このままでは清野と同じ体型になってしまうが心配されるが俺は特に気にしていなかった。腹が減ったら食う。減らなければ喰わない。自然の摂理である。
世の中、健康ブームでプロテインやゼリー飲料で腹持ちを良くさせて痩せようという輩もいる。だが、一生は短い。今日あった食事が明日で売り切れる可能性だってある。自分の選択の甘さで食べたいものが口に入らない位、悲しいことはないと、俺は思っている。糖尿病や高血圧になり食事に気を付けなければならなくなる時がまだ、来ていないのであるならば、好きなモノを好きなだけ食べるほうがストレスを溜めないし何より自分の心を豊かにしてくれる。
生きている本懐である。
俺はエンジンが最もかかりにくい月曜日の夜、毎日のルーティンである。牛焼き肉定食を食べ家へと歩を進めた。
何時ものように女子高のテニスコート横を通って、また、左に折れるとひとり暮らしの我が家だ。1月の最終月曜日、明後日は月ジメで仕事が忙しい。明明後日は支店の皆で、キャバクラだろう。
心愛は元気だろうか?1日で仕事に来なくなるというのはあの業界では珍しくない。まぁ、1日、2日で辞めるなら、俺とはご縁がなかったって事だ。
消費者金融業で人間の金に対する醜さ、執着心は散々見てきている。たかだか、300万円の借金で人生の全てを失い、自らの命を粗末にする輩もいる。本当に痛い。
俺は部屋のドアを開けると、エアコンのスイッチを入れた。時計は午後7時半辺りを指していた。
床暖房のスイッチも入れ身体全体を暖める。俺は料理系のYou Tubeを観ていると。
玄関が『ピンポン!!!!』と鳴った。こんな遅い時間に来るのは新聞の勧誘屋かN○Kの支払い請求に決まっていた。どっちにも対応する気がなかったので、俺は無視した。
「おるんやろ?なんでやねん。」
は?とタケルは一呼吸かけて考えた。
「オイ!ストーカー。警察に引き渡すぞ!ワレ!下手な関西弁使いおって!」
俺は部屋のドアを怒りを込めて開けた。
そこにはセーラー服姿の河北 心愛が笑顔で立っていた。
「昨日のお金、返しに来たの・・・」
「なんやて?どういうごっちゃ!」
「私、嘘付いてたし。18歳だけど、高校生だからまだ、成人してるって言えないからね。でもね。後、1ヶ月で卒業式だから・・・」
「なんや!」
「高校生のウチに私をオンナにして下さい。お願いします!」
「アカン、アカンぞ!無理や無理!他で済ませろ!」
「じゃ、キャバクラで素敵なオトコの人を探します。」
心愛は悔しそうに下唇を噛んだ。
「それがええ。それがええ。俺には役不足や重たい重たい。処女は重い。」
そう言って、俺は家のドアを閉めようとした。しかし、心愛が一言、呟いた。
「中に入れてもらえるまで外で待ってます。凍死覚悟です。」
「凍死?やめや、やめや、そんな東京で凍死て!笑かすな!」
「私は本気です。」
「勝手にせい!」
俺は扉を閉めた。
10分後、人の気配がする‥……。
15分後、人の気配がする。。。。。
17分後、人の気配がするようなしないような・・・俺は時計を観た。8時を回ってる。心愛がいるなら、家まで送らないと・・・
「あーーーーーーーーーっ!めっちゃ、イライラする!しゃーないやんか!」
20分後、ドアを開けるとその向こうに、にこやかな心愛の笑顔があった。
「中には入れ!寒いやろ?暖ったまらんかい。」
俺は彼女を部屋に招き入れるやいなや、後ろから抱きつかれた。
「タケルさんて・・・広い背中・・・」
既に心愛の頭の中は翔んでイスタンブールだった。
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