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大事な人で真っ先に出てきたのはやっぱりあずとゆいで、二人の事を思い浮かべながら話した。
ちっちゃい頃の話や、最近あった話なんかをしているうちに、ついつい誰にも言ったことのない話まで口に出してしまった。
先輩のほどよい相討ちに気が緩んでしまったのか、自分で抱え込んでおくには辛くなってしまったのか、あるいは両方か。
ぐるぐると胸の奥に渦巻いていた気持ちを少しでも話し出してしまえば、次々と溢れて止まらなかった。
「僕は、狡くて、自分、勝手、だから、二人の、気持ち、に、気づいていても、知らない、ふりを、してしまう。二人が、僕から、離れて、しまったら、きっと、僕は、耐え、られない。留学、したときに、気づいた。二人と、会えない、のは、凄く、つらい。ただ、ただ、二人の、優しさに、甘えて、ばっかり。この、ままは、良くない、て、分かって、る、けど、抜け出せ、ない。二人に、依存、してる。もう、どう、すれば、いいのか、分から、ない」
先輩を見れずに徐々に下がってしまった視線は、空のコップに向けられていた。はじめて話した心の内に、心底嫌気がさした。大事な二人に、こんなにも迷惑をかけている。僕は、二人の優しさを甘受してばかり。なんにも返せていない。
考えれば考えるほど、涙は溢れて止まらなかった。止めたいのに止まらない。初対面に近い先輩の前で、ぼろぼろと泣き続けてしまう状況に恥ずかしくなる。
「そんなに泣いたら目が溶けちゃうわよ」
先輩は綺麗なハンカチで僕の涙を拭いてくれた。優しげな笑みに、強ばっていた身体から力が抜けた。
「ふふ、別に依存しててもいいんじゃないかしら。あいつらが喜んで貴方の事を甘やかしているんだから、迷惑なんかじゃないわよ。それに、あいつら死んでも貴方のもとを離れないわよ」
急にむぎゅっと頬を包まれ、先輩と目が合う高さまで顔をあげられた。
「可愛い子なんて、甘やかされてなんぼなんだから。それが、可愛い子の特権よ。貴方は誰にも負けないくらい可愛いのだから自信をもって、我が儘になりなさい」
先輩の言葉は滅茶苦茶だったけど、何故か心が軽くなった。今まで悩んでたのが嘘みたいにスッキリした。
頬を包んでいた先輩の手にすりより、お礼を言う。
先輩は激しく悶えたあとに、満面の笑みを浮かべた。
「貴方の悩みが解決できてよかったわ。次からは本格的に絵を描いていくから覚悟してちょうだい」
先輩とは日程調節のために、LINEを交換してから別れた。
結局お菓子を食べさせてもらって、相談にのってもらっただけで終わってしまった。先輩には申し訳ない気持ちもあるけど、それ以上に感謝の気持ちでいっぱいだった。
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