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アートな世界
ガラガラガラッ
「せっ、セーフ」
「せ、ふ」
息を切らしチャイムと同時に教室へ飛び込めば
「あほか、五分前に教室にいなかったら遅刻だ。早く座れ」
担任に頭を軽くはたかれた。
はなちゃんと二人、恨みがましく頭を押さえながら席に着けばクラスの皆が笑っていた。
この担任、皆からホスト教師といわれるくせして中身は真面目なのだ。
SHR終わりごろ突然ドアが開き、デカイ美人な人が顔を覗かせた。
「あらぁ~、まだ途中だったのね。ちょっとお邪魔するわよ。編入生の子っているかしら?」
美人さんの言葉に皆が一斉に僕を見てきた。
美人さんと目が合う。
「まぁまぁまぁ!!かわぁいーじゃなぁーい」
目があった瞬間、音速で机の前にやってきた。
「あぁ、いい顔してるじゃない!ぱっちりお目目に綺麗な鼻、プルとした小さなお口がたまらないわね、あらまぁ、私の手で顔隠せるんじゃない?」
マシンガンのように止まらない話とむにむに、さすさす、顔を触られまくる状況に脳がキャパオーバーした。
「せっ先輩、柊くんがビックリしすぎて固まってます!!その辺で止めてあげてください!」
斜め前の席の田中くんが助けてくれた。
「あら、私としたことが興奮しちゃって。ごめんなさいね」
ふふふっと笑いながら言う先輩に、田中くんはため息をついた。
「本当、落ち着いてくださいよ。で、先輩は何をしに来たんですか?」
「そうねぇ、可愛い子が入学してきたって聞いて、絵のモデルになってもらえないかなって思って来たのよ」
どうかしら?と小首を傾げ先輩はこちらを伺った。そしてニヤリと笑い、言葉を続ける。
「今なら、わざわざベルギーから取り寄せた美味しいチョコレートが食べれるわよ!」
「やり、ます!」
「あらぁ、ありがとー。それじゃあ放課後美術室でまってるわ!田中に連れてきてもらってね」
るんるんと教室を出ていく先輩に二度目のため息をつく田中くん。
「本当ごめん。全然今からでも、嫌なら断ってくれても構わないよ、なんなら僕から言うよ」
「ぜん、ぜん。チョコ、食べれる、なら、お安い、ご用」
スイーツは偉大なのだ。
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