洋館

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「まさか死体?」  さっきからずっと考えていたことが口にでた。 「そんなわけないわよ。三人の影はある」 「きっと魔女が魔術でなんかしたんだよ。だから」 「魔女とかまだ信じてるの? 幼稚ね」 「魔女もオニも桃太郎もいるんだ!」 「静かに! バレるでしょ」  サキがにらんだ。あのときの目は魔女よりこわかったかもしれない。でも、僕にもゆずれないものはあった。 「ご、ごめん。でも、いつか僕はいるって証明してみせるよ」 「そうよ、証明よ。確かめにいきましょ」 「え?」 「あそこ答えがある」  サキは(やぶ)をかきわけて館を目指しだした。  あわてて付いていく。  ゴミ袋まで、館の人に見つかることなくたどりついた。  けど、そこには強烈な臭さがただよっていて、おもわず叫びそうになった。館の人に見つかるまいと、口を両手で押さえる。 「なかを確認してみたいけど、ここでガサゴソするとバレるかも。あっちの草むらまで持っていったらどうかしら」  イヤな予感がして、目をそらす。 「ねえ、運んでよ」  やっぱり。腕を引っ張られた。  持っていたカサをサキに渡して、しぶしぶ袋を両手でつかむ。  力仕事は僕の得意とするところだった。でも、あのときは請けおいたくなかった。臭いし、ハエもたかっているし……生首でもはいっていそうな重さ。  気持ち悪さと恐怖とたたかいながら、指定された庭のかたすみに運んだ。 「開けて」  指示されるがまま、袋の結び目をほどいた。  あらわれたのは、黒くどろりとした丸いなにか。それはまるで、血にぬれた黒髪の頭部のよう――。 「で、でたー! 生首だー!」  僕はかけだし、はじめに観察していたところまで帰ってきた。 「タクヤくん、ちゃんと確かめないと」  サキは一歩も動かず、袋をのぞきこんでいる。 「これ、死体じゃないとおもうよ。でも、なんだろ」  サキはカサで黒い物体をつっついた。  僕のカサでさわるなよ、と文句をいおうとした。  そのとき。  館から人がでてきた。腰の曲がったあの老婆だ。サキのほうに向かってくる。完全に気づかれた。 「なにやっとる!」  老婆は意外と元気な足どりで、迫ってくる。 「はやく逃げろ」  呼びかけても、サキは動こうとしない。こわくて動けないのだろうか。  けど、もしアイツが魔女で、つかまったら大変だ。煮こまれるかもしれない。  彼女を救うため、戻り走る。
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