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渡が大きくため息をつきながら言う。
「いや驚いたな。AVなんて暴力団や反社会勢力が作っている物とばかり思っていた」
星島が苦笑しながら応える。
「昭和の時代にはそういう事もあったのかもしれないですけどね。今のAV業界は2016年ぐらいからこういう取り組み重ねて来てクリーンですよ。あたしがAV女優としてデビューしたのは2018年で、こういう自主規制が始まった後なんで、出演強要とか女優の人権侵害とか、少なくともあたしは見た事も聞いた事もないですね」
遠山が考え込んだ表情で言う。
「それは理解できたんだが、買う方にしてみれば、適正AVかどうかなんて、見分けはつかないしな」
「あら、そんな事ありませんよ」
星島は自分のスマホを取り出して、すいすいと操作しマークが映し出されているホームページを画面に表示した。
「適正AVである事を証明するテロップやマークを、知的財産振興協会というまた別の団体から発行してもらってます。配信作品なら冒頭にこのテロップ、DVDのパッケージとかならこのマークがどこかに表示されているはずですよ」
適正AVの文字を含んだロゴを見て、松田が感心して言った。
「これはそういう意味の物だったんですか? なんでこんなテロップがいちいち出て来るのかと……」
筒井と宮下が同時に声を上げた。
「ん?」
宮下が松田に詰め寄った。
「松田さん、今、いちいち出て来る、と言った?」
松田はあわてて胸の前で両手を振った。
「あ、いや、その、あ、そうだ、部隊の先輩が前にそう言っているのを聞いた事があるという事でして、はは、あはは」
宮下がまだ疑わしそうな目で松田の顔を見ながら、星島に訊いた。
「では逆に、このテロップやマークがない映像作品は適正AVではないという事なのね? そっちは違法な物というわけ?」
星島は小首を傾げて答えた。
「違法とまで言えるのかどうかは、ケースバイケースなんでしょうけど。俗に言う同人AVですね。ただ、少なくとも出演女性の人権や身の安全がきちんと保証されない事だけは確かです。以前からあった出演強要などの問題を起こして来たのはそういう製作者なんですよ。何年もかけて人権侵害の危険を取り除いて来た適正AV業界が一緒くたに扱われているのが、あのAV良化法の最大の問題なんです」
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