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翌日の朝、宮下は渡研に行く前に警視庁公安機動捜査隊の隊長室に呼び出された。隊長室に入ると既に、隊長のデスクの前に椅子が向かい合わせに用意してあり、そこに座るように指示された。
宮下が隊長と向かい合って座ると、隊長はいきなり大判プリントの写真の束を宮下の前に広げて見せた。
その写真には2階部分がぐしゃぐしゃに潰された、豪勢な日本建築の一軒家が映し出されていた。宮下が目をぱちくりさせていると、隊長はそれらの上にもう一枚、今度は暗く不鮮明な写真のプリントを重ねた。
「宮下警部補、これは何に見える?」
宮下はピンボケの写真を凝視して首を傾げながら答えた。
「熊……でしょうか? でも体のあちこちに銀色の、まるで鎧でも着こんでいるかのような」
「やはりそう見えるか。だが熊だとすると、後ろ足で立ち上がった時の体高が10メートルはある事になる」
「そんな巨大な熊、聞いた事がありません」
「しかも金属製の鎧を着た熊だ。俺も聞いた事がない。防犯カメラが偶然捕らえた映像だが、見ての通り不鮮明でこれだけでは何とも言えん」
宮下は写真から目を話して隊長に向き直った。
「謎の巨大生物なら渡研の仕事ですね。ですが、何故今回に限って私に直接?」
隊長はさらにもう一枚の写真のプリントを宮下の前に差し出した。そこには街灯の下に立つ、明るいブラウンのセミショートの髪の若い女性が映っていた。
「この女性が容疑者という事ですか?」
宮下はその写真を手に取って隊長に訊く。隊長は腕組みをして眉をしかめた。
「それは分からん。少なくとも家屋を破壊した実行犯ではあるまい。だが身元は簡単に分かった」
隊長は今度はノートパソコンの画面を宮下の方に向けた。そこには、若い可愛らしい女性たちの顔写真がずらりと並んでいて。写真の中の女性の顔も上の列にあった。
宮下は画面をのぞき込んで首を傾げる。
「何のサイトです?」
「芸能プロダクションだ。ただしAV女優専門のな。その女性の芸名は佐久間ミーナ」
「AV女優?」
「正確にはその卵だな。まだデビュー前のようだ。そしてもう一人、君に渡研を介して接触して欲しい人物がいる」
隊長がノートパソコンの画面を切り替え、別の大人びた髪の長い女性のバストショットの写真を写し出した。
「その女性の名は星島さくや。芸名だがな。こちらもAV女優だ」
宮下はさらに戸惑った表情になって首を傾げる。
「この星島という女性が容疑者だと?」
「いや。その線はむしろ無い」
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