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隊長はため息をつきながら説明を続けた。
「その破壊された家屋は衆院議員、浅川文代の自宅だ。浅川議員の遺体はその2階の残骸から発見された。ぐしゃぐしゃに潰れた肉塊になってな。だが場所は議員の地元、広島県。当日星島さくやが東京にいた事は確認済みだ」
「なぜこの女性と接触する必要が?」
「数週間前、佐久間ミーナの捜索願いを所轄の警察署に出そうとした女性がいた。それが星島さくや。もっとも肉親ではないし、佐久間ミーナは当時20歳の成人なので、捜索願いは受理されなかったが」
「AV女優という以外に共通点は無さそうですね。そんな話がなぜ公安機動捜査隊に? しかも渡研を介して、とはどういう事なんですか?」
隊長はデスクの上に身を乗り出して真剣な顔つきで宮下に言う。
「これはここだけの話だ。渡研の他のメンバーにも他言無用だ。いいな?」
宮下が無言でうなずくと、隊長は声をひそめて言った。
「佐久間ミーナの身辺を洗ってくれという依頼が非公式に、防衛省から来ているんだ」
「防衛省から? なぜです?」
「私にも理由の説明は一切なかった。つまり極秘という事だ。今回渡研には人探しをやってもらう。今日の午後、星島さくやが渡研を訪ねて来る。所轄の署の口利きという事で、そういう手筈になっている。宮下警部補、周りに気づかれないように星島さくやに協力しながら、裏で何が起きているのかを探れ。同じ女性の君なら、いろいろとやり易かろう」
「まるで雲を掴むような話ですね」
「二人とも容疑者とは考えられない今の状況では、警察は正式に動けん。その必要があるなら、雲だろうが星だろうが掴んで来い。それが我々公安畑の人間の仕事だ」
「承知しました」
宮下は椅子から立ち上がり、隊長に敬礼して部屋を後にした。
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