マグダラのマリアのための黙示録

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 低い長テーブルをはさんで3人掛けのソファが向かい合う応接スペースに、全員で座って話を整理する事にした。  松田が、星島が持ってきたクッキーが並んだ皿と、紅茶のカップを人数分テーブルに並べると、遠山がぐいぐいと前に出て星島を手招きした。 「星島さん、こちらへどうぞ。僕の隣の席で……」  渡がつかつかと歩いて遠山に近づき、耳を引っ張って星島から引き離した。遠山が抗議の声を上げた。 「いてて、痛いじゃないですか、渡先生」 「やかましい! 男3人は壁際。女性陣は反対側に」  渡の指示で壁を背にしたソファに奥から松田、渡、遠山の順に座る。向かい合った位置に奥から筒井、宮下、星島の順に腰を下ろす。  渡が軽く咳払いして言う。 「とりあえずお互いの自己紹介をしておこう。私がこの研究室の責任者で、理学部地学科教授の渡です。隣が同じく生物学部の准教授の……」  遠山が正面向かい側にいる星島に向けて声を張り上げた。 「遠山です。30代独身、結婚歴なし。ちなみに趣味はですね……」  渡が低い雷鳴のような声で話を遮った。 「余計な事は言わんでいい! それからこちらが松田君。本職は陸上自衛隊の自衛官です」  渡に促され、筒井と宮下がそれぞれ名前と本職を星島に告げた。星島が上半身を少しかがめて言う。 「星島さくやと言います。芸名なんですけど。もうご存じとは思いますが、職業はAV女優です」  星島が状態を起こすと、その豊満なバストが服の上からでも分かるほどはっきりとブルンと揺れた。  筒井と宮下は、横目で星島の胸をちらりと見て、それから真っすぐ頭を下げて自分たちの胸を見つめた。筒井も宮下も現代の日本人女性としては決して貧相な体つきではないのだが、何か心穏やかならざる感情を覚えていた。  渡が話を本題に移す。 「さて星島さん。あなたが探して欲しいというのはこの人で間違いないですか?」  渡が防犯カメラに映っていた佐久間ミーナの写真をテーブルに出すと、星島はすぐに大きくうなずいた。 「はい、この子です。でもこの写真はどこで?」  渡が慎重に言葉を選んで答えた。あまりに異様な事件であるため、浅川の自宅の半壊は、原因不明と報道されていたからだ。 「浅川という国会議員の自宅の半壊事故の現場近くと聞いています」  星島は急に顔を曇らせて、つぶやくように言った。 「あの事故のニュースはびっくりしました。あたしそのほんの1時間前に電話であの先生と話してたんですから」  宮下が目を見開いて星島の横顔を見た。宮下は口に出さず、心の中で叫んでいた。 「つながった!」
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