一日目

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一日目

 目を覚ますと昨日と同じように病室のベッドに横たわっていた。テレビの配置もカーテンも何一つ変わっていない。 「なんだ、夢か」 あの時たしかに、魂が身体から抜けていくような感覚があったのだけれど……。あの子が助かるような気もしたけど、そんな淡い夢叶うわけないよね。 「まって、さなが目を覚ました。目を覚ましたよ」 聞こえてきたのは、知らない人の声だった。さなって誰だろう。呆気にとられていると、みるみるうちにベッドの周りをたくさんの人が囲っていた。 「ちょっと、どいてどいて」 お医者さんがずかずかとその間を割って、私のことを観察し始めた。 「桜田さなさん。桜田さん、わかりますか?」 お医者さんはそう言いながら私の瞳を見たり、脈を図ったりしている。桜田さなって……。私はふと、昨日病室のニュースで見た名前を思い出した。私が車で轢いてしまった女の子の名前。彼女はたしか亡くなっていたはずだけど……。 「え、私が、桜田さな……?」 はぁっと息をのむ声が聞こえる。声を出した感激の声にも聞こえるし、状況を理解していないことに落胆する声にも聞こえた。とにかく、私が桜田さなのようだ。 「ああ、やっぱり記憶喪失ですね」 お医者さんはため息をついた。 「脳に強い衝撃が加わりましたから。でも、これで息を吹き返したのは奇跡ですよ。詳しい検査をこのまま続けていきますので、みなさんは病室から出て行ってくださいね」 早口でまくしたてられて、桜田さなの家族や友人と思われる人たちは感動も冷めやらぬまま出ていった。 私、桜田さなに乗り移ってしまったのだろうか。口を開けてぽかんとしていると、お医者さんの指示でどこかへ連れていかれた。その日はいろいろな検査を受け、気が付くともう夕方になっていた。
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