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鈴木綾音に感じる小さな違和感に首を傾げつつ、母校の門をくぐる。駐輪場を通り過ぎグラウンドを横目に、先を行く皆の足はどうやら中庭へ向かっているようだ。高校時代をぼんやりと過ごしていたからなのか、あまり思い出らしい思い出もないのだが、こうして校内を歩けば、確かにこんな感じだったかもしれないと、薄っすらと当時のことが思い出された。
先頭はすでに目的の場所に辿り着いているらしく、中庭の一角に小さな人垣ができていた。
「なあ。いくらタイムカプセルを埋めたとはいえ、勝手に掘っていいのか?」
隣の友人に至極当然の疑問をぶつけると、向こうも当然というように面白くなさそうな声で答える。
「ちゃんと事前に許可をもらってるんだろ。でなきゃ、いくら卒業生とはいえ無断で校内に入ることなんてできないだろ。このご時世」
「まあ、確かにそうか」
高校生の頃には考えたこともないような会話を当たり前のように交わしながら、俺たちも人垣の最後尾に加わった。
タイムカプセルといえば、埋めた場所が分からず皆で大捜索。泥だらけになりつつも結局見つけられなかった、なんてことをテレビやなんかでよく聞く。
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