なくした約束

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 密閉された袋の口を開け、どことなくひんやりとする紙片を取り出す。土に埋まっていたそれは黄ばみも虫食いもなく、昨日埋めたのではと思わせるほどに劣化の跡がなかった。  一体何が書かれているのだろうか。小さな期待と確実に襲ってくるであろう羞恥の波に体を強張らせながら、カサリと紙片を開いた。途端、目に飛び込んできた文字に息を呑む。  これは、本当に俺が入れたものだろうか。不安になり、紙片の入っていた袋を見ると、確かに「佐藤伸吾」と俺の名前が記されていた。もう一度まじまじと紙に書かれた文字を見つめる。書かれた文字は見覚えのある俺の字で、まぎれもなく俺が書いたものだと主張してきていた。 “鈴木綾音に気をつけろ”  そんな意味深な言葉をどうして俺はタイムカプセルなんかにいれたのだろうか。当時の心境が全く分からず、他に何か書かれていないかと凝視していたら、背中をポンと叩かれた。突然のことにビクリと肩を震わせて振り返ると、友人が怪訝な顔をする。 「おい、伸吾。そんなに怖い顔してどうしたんだ? 何か変なものでも入ってたのか?」  周りを見回すと元同級生たちは思い思いに宝を見せ合い笑いあっている。誰も俺のことなど見ていないことを確認すると、そっと手の中の紙片を友人へと見せた。
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