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しかし、俺はそこではてと首を傾げた。俺にはタイムカプセルを埋めた記憶がなかったのだ。そのまま友人に、高校の頃にタイムカプセルなんかを埋めたかと問うと、彼にも覚えはないらしいが埋めたのだろうという、なんとも曖昧な答えが返ってきた。
そうすると、面倒臭さよりも好奇心の方がどんどんと俺の中で大きくなっていった。俺は一体どんなものをタイムカプセルに入れたのだろう。好奇心に背中を押され、俺は同窓会の参加を決めた。
同窓会当日、煩わしさと好奇心それから多少の緊張に顔の筋肉を固まらせながら、会場となっていた料亭の暖簾をくぐる。この辺りでは大人数の会食といえばこの店なので、俺も何度か訪れたことがある。店内自体は馴染みのある場所のはずなのに、入口で俺はぴたりと足を止めた。いつも落ち着いた雰囲気を醸し出している仲居のおばさんのだみ声ではなく、どこか騒がしさを纏った張りのある声が俺を迎えたからだ。
「あ、佐藤くんじゃない?」
「あ? えっと、そうだけど……」
「私、鈴木。鈴木綾音。覚えてる?」
「あ~、……うん」
「あー、その反応は覚えてないな、もう」
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