なくした約束

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 ぱっちりとした目は印象的で、まつ毛はクルンと綺麗にカールしている。眉毛も緩やかなカーブを描き整えられている。これらを隠す黒縁眼鏡はないので、今はコンタクトをしているのだろうか。髪は、毛先が肩口でサラリと揺れる。俺は、女の髪型には詳しくないので、なんという名前のカットなのかは知らないが、それでも、縄のような三つ編みでないことはわかる。  友人のいう高校時代の鈴木絢音と、視線の先にいる鈴木絢音は、なんとなく正反対な印象を受けた。彼女が言ったように、十年も経っているので、容姿が変わっているのは当たり前なのだが、それでもイメージした高校生の鈴木絢音と今の鈴木絢音の面影が、俺の中でうまく重ならなかった。覚えていないので、面影も何もないのだが。  覚えのないはずの面影を鈴木の何処かに見出そうと彼女を遠巻きに眺めていると、不意に鈴木の視線がこちらへと向けられた。  突然のことに目を逸らすことができず、ばっちり彼女と視線が重なった。なんとなく気まずくてオロオロとする俺のことが可笑しいのか、鈴木はクスリと笑うと、手をひらひらと振ってみせる。  そんな様子を俺の隣で見ていた友人は、驚きのあまり唾を撒き散らしながら、俺のTシャツを掴み詰め寄ってきた。
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