なくした約束

8/16
前へ
/16ページ
次へ
「おい、伸吾。あれは、どう言うことだよ?」 「はあ? 知らねえよ。さっき会った時からなんか馴れ馴れしいんだよ、あいつ」 「おまえと鈴木って、実は高校時代そういう仲だったのか?」 「そんなわけあるか。俺は、鈴木のこと覚えてないんだぞ」 「ああ、そっか。そうだったな。いくらおまえが薄情な奴でも、関わりがあった女子のことは流石に忘れないよな」  なんだか馬鹿にされたような気がして、思わず友人の横っ腹を軽くど突く。痛くもないのに友人はそれを「痛っ」と言って体を捩って避ける。高校時代も、毎日こんなノリだったなと少し昔のことが思い出された。 「そう言えば、俺、高校の頃にあいつとなんか約束したみたいなんだけど、おまえ、何のことか知ってるか?」 「あいつって、鈴木のことか?」 「そう」  俺は、自分の記憶にない部分を友人の記憶で補おうと尋ねてみた。しかし、彼は首を傾げただけだった。 「約束したのはおまえだろ。俺が知ってるわけないじゃん。ってか、やっぱりおまえ、鈴木と仲良かったんだな。約束なんて仲良くなきゃしないじゃん」 「だから、そんなんじゃねえよ。あーちくしょう。帰りまでになんて、絶対思い出せねえ」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加