なくした約束

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 会食中、俺はずっと不機嫌だった。不機嫌な理由は、田舎臭い料理が続くコースメニューのせいなどではなく、隣に座る友人のくだらない品評会のせいでもない。チラチラと頻繁に送られてくる視線が、実に鬱陶しかったのだ。  鈴木は両隣の奴らと楽しそうに言葉を交わしながら、事あるごとに俺に視線を送ってきていた。その視線が「どう? 約束、思い出した?」とでも言っているようで、俺はまるで気が休まらず、せっかくの食事も味わえなかった。  常に見られている居心地の悪い会食が終わるころには、酒も入り、周りの皆はすっかり出来上がっていた。初めのうちは遠慮がちだった声も、会終盤には大声で話す奴ばかりで、変に大人ぶって名刺交換なんかをしていた奴らは、肩を組んで大笑いしている。傍から見れば、それなりに盛り上がった同窓会になったのだろう。赤ら顔の幹事が、会食の終わりを告げた。  いよいよこの後は、ビッグイベントと言っていたタイムカプセルの開封に向かうらしい。タイムカプセルは、料亭から十分程歩いた先の高校の中庭に埋めてあるので、各自で学校へ移動するようにとのことだった。皆がそそくさと店を出ていく後を追って、俺も友人と連れ立って料亭を出た。
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