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みくは、背中に航を乗せ、猛スピードで夜空を突き進んだ。航は、みくの背中に生えた巨大な羽にしがみついている。航が振り落とされやしないかと、みくははらはらしたが、わずか数分で無事に秋葉原上空にたどりついた。
みくと航は改札近くの公園に降り立つ。付近にはメイドやアニメの人気キャラに扮した若者がたむろしていた。ルミウスの姿でうろうろしても騒ぎにならないのが秋葉原のよいところだ。
「ねえ、空を飛んで寒くなかった」
「ルミウスバリヤーが効いていたからね」
「……何だかよく分からないけど、オウムはもういなくなっちゃったよ。どうするの」
「オウムの痕跡を探すんだ。例えば、羽とか」
「羽?」
「ルミウススメルを使う。みくの嗅覚は犬の一億倍、鋭くなる。ルミウスサーチで匂いをたどれる」
「……航がルミウスに詳しいなんて意外だよ」
「人気アニメだからね。常識の範囲だ」
みくと航は、オウムがいた周辺をくまなく探した。空き缶やたばこの吸い殻、割引券の残骸などに交じって、緑色の羽毛らしきものが落ちていた。これだ、とみくは思った。
「ルミウススメル……」みくの鼻腔に匂いが満ちる。オウムの頭を撫でた時の記憶が蘇ってきた。あのオウムの匂いだ。間違いない。
「よし、じゃあ次は」
「ルミウスサーチね」
「ご名答。だいぶ、ルミウスらしくなってきたな」航が笑った。
みくが航を背中に乗せて空高く舞い上がり、再び星空を切り裂く。オウムの匂いを探して西へ、東へ。どこを飛んでいるのか分からなくなってきたとき、ルミウスレーダーが反応した。
「見つけた!」
レーダーの反応がどんどん強くなる。オウムはもう目と鼻の先だ。しかし、雲を突き破ったみくたちの眼前に現れたのは、サーフボードにまたがった少女だった。少女は、長い髪とワンピースの裾をたなびかせて、超高速でみくたちの前を飛んでいる。レーダーはこの少女の匂いが、オウムの匂いと同一だと告げている。みくはもはや、どんな非常識にも驚かなくなっていた。
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