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「待ちなさい!」
みくの声に少女がぎくっとして振り返る。次の瞬間、みくの手が少女のサーフボードをとらえた。少女の目が吊り上がり、赤く光った。
「何をする! あっ…」
バランスを失った少女は、サーフボードから放り出されて真っ逆さまに落ちていった。みくは急降下して少女の腕をつかみ、そのまま地上に降り立った。
「このバカ女! 危ないじゃないか! 恩をあだで返すとは、どういうつもりだ!」
少女は猛然とみくにつかみかかったが、ミラクル戦士ルミウスの敵ではない。みくは、少女の足をつかんでひょいと持ち上げた。
「はなせ! くそ! 許さないぞ! そうだ、おまえを毛虫にしてやる! えいっ、えいっ! あれっ、なぜだ、どうして私の魔法がはじき返されるのだ!」
少女は意味不明なことをわめきながら、宙吊り状態でじたばたした。花柄のパンツがかわいらしい。
「私を元の姿に戻しなさない。そうすれば、手を放してあげる」
「願い事をかなえてやったのになんたる言いぐさだ!」少女の目が怒りの炎で燃えているように赤みを増した。
「ルミウスになりたいなんて思ったこと一度もないけど、私!」
「大願成就のためにはその姿になる必要があるのだろう。呪文は生き物だ。呪文なりに考えがあるのだと思うぞ。私は唱えるだけでプロセスには関与しない」
「無責任じゃないの! 呪文をキャンセルしなさいよ、そういう呪文もあるんでしょ!」
「無駄だね。いまのおまえに呪文は効かない。全てはじき返される。大願成就するほかないな」
「みく、その子を離してあげなよ。どうやら嘘は言っていないようだから。ほらっ、もう夜が明ける。そろそろ戻らないと」
航が東の空を指さした。朝日が昇り始めていた。山際が黄金色に輝いている。みくは少女を解放して、がっくりと地面に膝をつく。
「はあ……今日から学校に行けないのか……私、いつまでこの姿でいなきゃなんないのよ」
「光明はある。とりあえず、いったん落ち着こう。家に戻って仕切り直しだ」
みくが航を背負って飛び立とうとすると、少女が慌ててみくの足をつかんだ。
「ちょっと待て! 私はどうなる。山奥においてけぼりか? おまえのせいで、私は、乗り物を見失ったのだぞ!」
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