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みくたちが自宅に戻ったのは、朝の七時過ぎだった。全速力で飛んだが、どうやらチベットあたりの山奥にいたようで、思いのほか時間がかかった。
「ただいま……」
リビングに入ると、出勤前の両親と悠太郎が朝食を食べていた。みくの姿を見た両親の目に軽く失望の色が浮かんだのをみくは見逃さなかった。
「どこに行っていたの、そんな恰好で……あら、お客さん?」
「おばさん、お邪魔します。ご無沙汰しちゃって、しかも、朝早くからすみません」みくの背後で航が会釈した。
母親は一瞬ぎくりとしたが、航の全てを承知している様子を見てなんとか笑顔を取り繕った。
「まあ、航くん、本当に久しぶりね。しばらく見ないうちに大きくなって……」そう言いながら、母親の不安げな視線は、航の足元にいる少女にくぎ付けだった。
「あっ、この子は僕の親戚の子でして、名前は……」
「アルチーナ、アルチーナ・ダスピルクエット」。少女がぶっきらぼうに自己紹介した。
「ア、アルチーナちゃん……外国のご親戚なの。まあ、国際的ですこと。瞳の色が赤くて神秘的ねえ……あら、やだ、もうこんな時間。パパも急がないと」
「あ、ああ、そうだな。みく、悠太郎の送り迎えを頼んだぞ。何か解決策が見つかったら連絡するからな。家でおとなしく勉強していなさい。航くんと、アル…なんとかちゃん、こんななりをしていますが、みくをよろしくお願いします。ゆっくりしていってください」
両親は、逃げるように玄関を飛び出していった。新たなトラブルに巻き込まれそう予感がしたのだろう。娘のピンチだというのに薄情だなと悲しくなったが、みくは、自分の娘が突然、ミラクル戦士に変身して家を破壊し、幼馴染の男と赤い目をした謎の少女を連れて朝帰りしたらどう思うだろうと想像してみた。冷静でいられる自信はなかった。
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