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「パパ。ママ絶対に変だよ。いつものママじゃないよ」
そんな息子の切実な言葉に心当たりが多かった。やっておけと言った家事をやらず、何かあるといつも人のせいにする。ヒステリーなんてなかったのに急に不可解な言動が増えた。母親からも「ちょっと明美さん、変じゃない?」と連絡があった。
「家中に監視カメラつけるなんておかしいわよ」
「は? 監視カメラ? 何だそれ、俺聞いてない」
「そうなの? 五台もつけたらしいけど……近所で空き巣でも起きてるの?」
「いや全然」
「なんだか監視されてるみたいで怖くなって、家に行けなくなっちゃった。カズ君に会えないの寂しいから、遊びに来て」
「わかった。今度の土日連れてく。明美は」
「……ごめん。彼女には内緒にして二人で来てくれる? 詰問するような物の言い方するから、今ちょっと苦手だわ」
おかしいと思っていた矢先、先日家に妻の友人達が訪ねてきたのだ。
「明美さん大丈夫ですか? ショッピングに誘って絶対行くって言ってたのに結局来なかったんです。それなのに誘われてない! って私怒られて」
「約束すっぽかすのが常になってきたから変だなって思ってました。最近じろじろ観察するみたいに見てきてたんです。可愛いなんて思ってない物をとってつけたように褒めて」
「本当に可愛いと思ったものは目キラキラさせて喜ぶからわかるんですよ、嘘ついてるって。全然顔笑ってなかったし。悩みとかあるのかなって聞いても何もないって言うし」
三人は顔を合わせ、言いにくそうにしながらSNSを見せてくれた。妻の個人アカウントだ。そこには自分のものをママ友たちが盗んでいく、と実名を挙げて愚痴ばかり書いてある。
「さすがにこんな事されたら私たちも気分悪くて、もうブロックしちゃったんですけど。でも三人で話し合って、明らかに変じゃない? ってなって。被害妄想にしても、少しおかしいですよね。ちょっと自慢話が多かったけど悪い人じゃないし、何があったんだろうって心配になってきて」
息子や母とまったく同じことを言う。実名をあげた事を謝罪し、すぐに削除させると約束した。SNSの事を言っても支離滅裂な事を言い、さすがにおかしいと思い病院に連れて行った。鬱なのではないかと思ったのだ。
しかし、診断結果はまったく違うものだった。
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