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「B地区にえらいべっぴんさんが来て、やらせてくれるってよ!」
にわかには信じがたい噂が流れた。
「な、訳ないだろ、何寝ぼけてんだか。」
「また役所か、でなければ美人局とかしゃねぇの?上手い話しにゃ必ず裏があるっての。」
誰も信じてはいなかった。
我々ホームレスの時間は非常にゆっくりと流れているが、大した娯楽もないからこそ、逆に地域の噂等は直ぐに面白おかしく直ぐに伝わる。
「いや、マジらしいぞ、詳しくはわかんねぇけど、無料で、こんな汚ぇチンコでも平気で咥えてくれるんだってさ!」
そいつはかなり鼻息荒くしてまくし立てるが、将棋を打つ者、ガラクタを分別している者、ハウスの補修をしている者、洗濯物を鉄棒に干している者、誰一人としてまともに受ける人間はいなかった。
確かにホームレスを狙って美人局する女に被害にあった話は聞く。
たまに公園に来る、まともな若い女は宗教だったり、危なげな仕事の誘いだったりして、ろくな話しか聞いた事がない。
だから信じようにも信じられないのだ。
我々は身分を明かす事の出来ない、したくない者の集まりだ。
だから下手なトラブルに巻き込まれても、最悪命を取られても文句一つ言えない。
ヤクザに連れていかれた奴は二度と戻って来なかった。
元々人間関係やら社会やらに疲れて、ここへ流れてくるのだから、出来れば人と関わりたくない。
地区にたむろうのは、自分の命を守る為の最小限の社会だ。
だから隣の奴が生きようが死のうが、あまり興味はない。
好きな時に起きて、好きな時に小遣い稼いで、好きな時に眠れればいい。
いくらホームレスでも一人きりになるのは危険だ。
特にこのA地区は歓楽街に近い事もあり、食料調達や仕事には便利だが、たまに酔っぱらいがやって来てホームレスを殴ってストレス解消していく奴等もいる。
野良は格好の餌食だ。
身ぐるみ剥がされた上ヤクザに拉致される。
何人それでここの人間が静がに消えていった事か、、、
警戒心だけは、この辺の地域では一番高いとも言える。
舐められると負けなので、この公園に住まうホームレスはやたらと屈強な奴が多い気がする。
べっぴんさんの話はその場の笑い話しになり終わった。
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