ホームレスハウスに舞い降りた性天使【第2章】

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彼女は決してセックスだけの相手という訳ではなかった。 まぁここの住人の殆どがセックス待ちだが、そうでない人間も居て、世間話し相手だったり、相談相手だったり、愚痴聞いて貰ったり、色々だった。 けど、彼女はどんな人間にも確かに平等だった。 体調やケガの心配をしてくれたりと気も配っていた。 彼女の事を知りたがる人間は確かに沢山いた。 でも知ってはいけない様な気がした。 俺らだって、特に昔の事は触れられたくない。 だったら俺らも彼女のプライバシーを尊重しなくてはならないだろう。 何だか、暗黙の了解みたいなのがあったし、ここ何人かそういう話で揉めてシャドーさんが間に入って話を付けたという話も聞いた。 彼女を知ろうとする人間は、まずシャドーさんの謎の説教の後、何故だか分からないけど、そのまま消息を経った奴もいた。勿論そのまま残った奴もいるが、酷くシャドーさんに怯えている感があった。聞いても絶対に何があったか誰にも言わない。 噂では言う事を聞かない奴は、命を取られたんじゃないか、と真しやかに囁かれた。 けれど、真相は分からない。 そもそもシャドーさん自体が色んな意味で不明なのだから。 ボスに逆らうという事はそーゆー事もあり得るのだ。あながち全てが噂の範疇ではないのかも知れない。 彼女は女神として、A地区、B地区、C地区に顔を出す様になっているらしい。 たまに現場でそれ以外の地区のホームレスと話になった時、非常に羨ましがられた。 かといって自分のいるシマを勝手に移動する事は出来ない。 何故彼女がこの地区だけを回るのかは、やはり、誰も知らない。 ただのラッキーにしては謎過ぎる。 初めて彼女が訪れたのがB地区だったらしい。 そこからA地区、C地区に現れて行った。 でも、どの地区でも彼女の印象は殆ど同じで、彼女を皆好んで、崇拝していた。 余りの信仰ぶりに、俺はたまに心配になる位だった。 テルなんてどっぷりと浸かってやがる。 仕事も生活も彼女次第の動きになった。 まぁ、はたから見りゃ、覇気があって規則正しい生活のホームレスに見えるが、俺にはそれがあまりに異常過ぎて付いて行けなかった。
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