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「え?」
花森が不思議に思っている間に、当たり前のようにエレベーターに乗り込むと、地階に降りるボタンを押して花森の唇を荒々しく塞いだ。
「ど、どうしたんですか」
「人前では控えたが、ずっと伝えたかった」
すぐに到着した地階に放たれて、静かな廊下で花森は東御に強く抱きしめられる。
「愛している、沙穂。これで入籍できる」
「あっ……」
気付いた途端、花森はしまったと思う。まだ結婚に対する具体的な覚悟ができていないのに、源愈に対する対抗心だけで了承を勝ち取ってしまった。
「あの、もしかして……私たちって障害がなくなっちゃいました?」
「沙穂の両親がまだ残っているが」
「……反対はしないと思います、けど……」
「けど?」
「就職したばっかりなのに、結婚なんて早すぎますよお……」
「結婚相手との出会いが、結婚したい時期と重なるとは限らない」
「そうですけどぉ……」
東御は花森の顔中にキスをすると、「さっきは痺れた」と耳元で囁く。
「もしかして、惚れ直しましたか?」
花森はくすりと笑いながら、東御を上目遣いで見た。
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