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「後で……二人きりになったら言います」
「分かった。早く二人きりになろう」
「もう、いつも二人きりじゃないですか。焦らないで下さいよお」
花森は隣の東御の視線に、いつになく熱いものを感じる。
こんなに余裕のない様子を見せられると困る、と左手を握る東御の右手に視線を移した。
「結婚て変なシステムだなって思ってたんですよ」
「急になんだ? 学生時代の思い出か?」
「はい。日本の離婚率ってご存じですか?」
「3組に1組とか4組に1組とか聞くが」
「よくそういう数字が独り歩きするんですが、離婚率って年間の件数における人口対比でしか出ていないんです。厚生労働省の人口動態で離婚したカップルの件数を人口比にすると1.57%、その年の婚姻率が人口比で4.3%です」(※厚生労働省人口動態統計<令和2年>)
「単純にその婚姻率と離婚率を比較すると2.7組に1組が離婚しているというわけか」
結婚前になぜ離婚率の話だ、と東御は隣の花森に訝し気な目を向ける。
「日本は未婚率が上がっていますからね。人口比で出している離婚率は下がっています」
「なるほど」
「離婚理由は性格の不一致が多いのですが、あとはDV関係が主です。婚姻後に豹変する相手が多いことが理由で……」
「……豹変か」
「同居して10年以内に離婚するカップルが過半数です」
「まさか、それで不安なのか?」
東御は立ち止まりそうになったが、人の波に合わせてまた歩き出す。
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