運命の出会い

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運命の出会い

「あれ?珍しいじゃん、こんな時間に起きてくるなんて」 「新しいシェアメイト、来るの今日だよね」 二時間程しか睡眠を取っていない涼が、瞼を重そうにして話す。 「そうだけど管理会社から鍵、受け取ってんだろ。勝手に入って来るんじゃん?寝てろよ」 「そんなの、淋しいじゃん」 ふぁ〜と、大欠伸をしながら言う。 「優しいねぇ、涼は。今度の人は、長く居られるかな?」 「さぁ、どうだろうねぇ」 ふふっと笑って答える。 都内の豪邸がシェアハウス。 そこに住む、(りょう)柚月(ゆづき)が朝早くに、30畳近くあるリビングダイニングで話す。 「俺、帰ってくるの明日の朝だから、よろしく言っといて」 「りょ」 柚月に了解と返す。 「涼、今日休み?」 「ん、そうだけど」 「新しい人、揶揄うなよ」 ジロリと涼を睨む柚月。そんな事しないよ、と笑い飛ばして 「いってらっしゃ〜い、気をつけてね〜」 ひらひらと手を振って柚月を見送った。 うららかな春の陽射しに目を細めながら、涼は両手を上げて伸びをした。 陽射しで既に、半分以上解けてしまった昨日の名残雪。陽の当たらない庭の木の枝に申し訳なさそうに留まっている綺麗な白に目をやった。 「雪が降った次の日って、滅茶苦茶、明るいよなぁ」 広い庭に面した、大きな掃き出しの窓の前に立ち腰に手を当て独り言を言う。まだ解けていない雪に反射する陽が眩しい。 ツーブロックに刈り上げた部分に被さる髪は、微かな風にも揺れる程サラサラで、鼻先まで伸びた前髪が端正な顔立ちを隠して勿体無い。 やはり眠気は襲って来て、リビングのソファーに横になると、一瞬にして意識が遠のき完全に爆睡した。 ピンポンと玄関チャイムの音で飛び起きる。 「はぁーい!」 急に起こされたピンポンの音に、心臓がバクバクして、モニターも確認せずに玄関の扉を開けた。 そこにはリュックを背負い、両手にバッグを持った、いかにも真面目そうな男が立っている。 「あ、えっと…」 管理会社から、名前を聞いていなかった。 「本日からお世話になります!中条(ちゅうじょう)、中条 (たくみ)と申します!」 大きな声で挨拶をすると、背筋を伸ばし頭から腰まで一直線に45度の角度で上半身を倒す。あまりの大きなハキハキとした声に、涼は怯んで一歩下がった。 「あ、(くすのき) (りょう)です、よろしくぅ」 いやいや、大丈夫かよ、こんな真面目そうなヤツ。また直ぐに出て行くかなー、と心の中で涼が思う。 靴を脱ぐ為に両手に持った荷物を置こうと、顔を動かし場所を探している。 「持つよ、貸して」 涼が手を出すと、 「有難うございます!しかし、重いですので、何処に置いていいですか!?」 荷物を置くのを失礼だと思った匠が、またもキョロキョロと周りを見回した。 「そこに置いていいよ」 玄関ホールの床を指差す。 「では、失礼します!」 そう言って荷物を置くと、靴を脱ぐ為に屈んだ匠に話し掛ける。 「雪が解けて歩きづらかっただろ?」 「はい!でも大丈夫でした!残った雪に陽が反射して、歩くと暑いくらいでしたよ!」 いちいち声が大きくて、眉を顰めた涼を見て、ん?と首を傾げた匠だったが、次の瞬間、動かなくなる。 なんて、なんて綺麗な人なんだ、 涼を見て、匠は固まった。
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