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「ん?どうした?」
涼が匠の顔を覗き込むと、顔を真っ赤にして首を振る。
「いえ!何でもありません!」
匠が少し汗ばんでいる様に見え、
「何?緊張してる?」
「いえっ!」
そう言いながら赤みが差した顔はそのままで、靴を脱ぎ、また両手に荷物を持つとキョロキョロと目を動かす。
「あ、部屋、案内するから」
匠の荷物を持ってやろうと、バッグを取ろうとした時、手が触れた。
「あ!すみません!」
「あ、ごめんね。部屋、二階ね」
手が触れた事を謝ったのか、涼も謝ってみた。
ひとつバッグを持つと、広い玄関ホールにある階段を上り、涼が匠を見下ろす。
「どうしたの?こっち」
涼に見惚れている匠が、ハッと我に返った様な顔をして、後に続いた。
モデルさんだろうか、顔は勿論、スラリと華麗な長身、匠も背は高い方だが、ほんの少し涼の方が大きい様だ、そんな事を思いながら顔の赤らみが消えないまま階段を上る。
「ここね。机とベッドあるけど、気になる様だったら替えていいよ。昨日届いた荷物はここに置いたから」
段ボールが幾つか積んである。家具もそのまま使って良いと管理会社から聞いた通りだと、匠は微笑んで振り向くと、
「有難うございます!このまま、使わせて頂きます!」
口角を上げ、真ん丸い目をして涼を見た。
「あ…そう、家の中を先に案内しようか?」
「いえ!先に片付けてしまいますので、後ほどお願い出来ればと思います!」
「あ、そ、そう… 片付け、頑張って」
滅茶苦茶元気な奴だな、引き気味になりながらもとりあえず、無難に会話を終わらせる。
なぁーんか調子狂うなぁ、そう思いながら匠を見ると、またまた睡魔が襲って来る。
隣りに並ぶ自分の部屋に入って、涼は深い眠りについた。
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