掴んだ尻尾と柚月の恋

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「どうする?夕飯」 こんな風に三人で街を歩く事は、匠の歓迎会以来で、ちょっと嬉しくなった涼が弾んだ声で訊いた。 「飲みに行くか?」 「行きましょう!」 柚月の提案に、匠が満面の笑みで答えた。 「いやマジでさ、匠は凄いわ。俺の事も涼の事も変えたんだぜ」 今日は柚月に思い切り飲ませてやろうと思ったが、あまりに匠を絶賛するので涼が面白くない。 「匠は俺のモンだからね」 ボソッと柚月の耳元で呟く涼。 「んー?匠と恋に落ちたら、俺、匠の子が産めるな!」 珍しく酔った様な柚月から信じられない言葉が飛び出し、涼が胸ぐらを掴んで持ち上げると 「ざけんなよっ!」 と睨んで柚月を揺すった。 「りょ、涼さん!止めてよ!」 慌てて匠が涼を宥めた時、ブーブーッと柚月のスマホに着信。 三人の視線がバッと柚月のスマホに向いた。 『お花屋さん』 と画面に出ている。 お花屋さん、って、 涼がツッコミたいのを必死に堪える。 柚月が匠と涼に目を遣りながら、スマホを持つと席を離れた。 椅子に座り、沈黙のまま待つ二人。 黙って大人しく待つ。 静かに戻って来る柚月を目で追う。二人とも全く同じ速度で。 ひとつ大きく息を吐くと、頭を掻いた柚月を息を呑んで見守る。 「今度ご飯、誘って下さいって」 やったー!と、匠と涼が握り拳を天井に突き上げて抱き合って喜んだ。 いちいち抱き合ってんじゃねーよと思う柚月は、二人の姿が涙で霞んでよく見えない。
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